聖霊降臨節第二、三位一体主日、讃美歌１０，１８１，３３３、

　　聖書日課　出エジプト19：3〜8a、使徒2：（14〜21）22〜36、詩編8：2〜10、



《使信》という言葉は、たいへん難しいものらしくて、PCに入力してもすぐには転換できません。この意味は英語ではメッセージとなります。あるいは、ニュースと言っても好いでしょう。判りやすい日本語を探すと、お便り、となりますが、もう少し内容的には深いものです。公の使者が携えてきた便りですから、公式文書の中身です。

ところで、本日は三位一体節第一主日に当たります。前主日には、父、子、聖霊なる神が示されました。三つの形をとるひとりの神、これが初代教会以来の《教会の使信》、三位一体の神です。ユダヤ教は一位一体、多神教は三位三体、それらのどちらとも違う、キリスト教の三位一体はキリスト教会の信仰の根幹をなします。長い三位一体節の期間中、幾たびか、この事を学ぶことになるでしょう。



本日の旧約聖書日課、出エジプト19章は、エジプトで奴隷となっていたイスラエルを指導し、約束の地カナンへと導き出したモーセが、三月目にシナイの荒れ野に到着した時のことです。ここまでには、二度にわたる水の奇跡とマナとウズラの奇跡、アマレクとの戦いなどが語られています。

それから、シナイの山を前にして宿営します。モーセは山に登ります。その山から、主がモーセに語りかけられます。

「エジプトから脱出した事を良く顧みなさい。それは私の力がしたこと。わたしの契約を守りなさい。そうすれば、あなた方は私の宝の民、祭司の王国、聖なる国民となる。」

素晴らしく詩的な表現もあります。「あなたたちを鷲の翼に乗せて　わたしのもとに連れて来た。　あなたたちは全ての民の間にあって　わたしの宝となる。世界は全てわたしのものである。」これを、モーセはイスラエルの民に語りました。彼らはどの様に受け取ったでしょうか。8節にあります。

「わたしたちは、主が語られたことをすべて行ないます」

5節の「わたしの声に聞き従い、契約を守るならば」と言う言葉は、神の掟を守ることと受け取られたのです。やがてイスラエルにおける「律法主義」の問題の始まりを、私たちは見ているのです。実は律法遵守ではなく、唯一の神を主と拝することこそ重要なことです。

どの様に主と拝しているか、その表現が律法を守ることになったのです。ところが、主と拝する事をなおざりにして、律法をどのような形で守っているか、ばかりに捉われる様になります。



ここで示された神の宣言に正しく対応した、イスラエルの人々の信仰を表現したものがあります。申命記6：1〜9を御覧ください。これも、教会暦では、この時期の聖句です。

「聞け、イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である。あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。

今日私が命じるこれらの言葉を心に留め、子どもたちに繰り返し教え、家に座っているときも道を歩くときも、寝ているときも起きているときも、これを語り聞かせなさい。・・・」



これが有名な「シェマーイスラエル（聞け）」と呼ばれるものです。毎日朝夕二回、この言葉を朗誦します。主イエスは、マタイ福音書22章で、これこそすべての律法の中で最も大切なもの、と教えられました。

エジプトでは、多くの神がありファラオと呼ばれる王は、その神を祀る最高神官でした。むしろ神の化身である、ということも指摘されるほどです。そのエジプトから出てきた時、モーセは民衆に唯一の神を礼拝するように教えなさい、と示されたのです。

　ここには三位一体の《一体》が示されています。神は唯一である、ということです。



使徒言行録2章は、聖霊降臨節の日にペトロを始め弟子たちが大勢の人々を前に演説をした中身です。そのうち22節から24節には、「三位」であることの根拠が示されます。

十字架の上でユダヤ人たちによって殺されたイエスは、「神から遣わされた方」である、と述べられます。イエスもまた、神である、という主張です。イエスは全く特別なお方であったことが、人々の間で証明された、とも述べられます。イエスの奇跡、不思議な業、しるし。イエスの生涯の全てが、イエスが神であることの証明となっていました。そのこと自体も不思議なことです。聖霊が降った時、ようやく弟子たちもその事を理解したのです。十字架と復活の隠された意味を理解するようになりました。

ただの人間には、死からの復活、甦りということはあり得ません。イエスは特別な方である、と理解するしかありません。同時に、そのように特別な方、神から遣わされた方が、一般の人間同様、いつまでも「死によって支配されたままでいる」ことも考え難いことでした。

　32節から36節には、三位一体に関するもう一つの説教があります。

キリスト・イエスは復活させられ、天に引き上げられ、神と等しい地位につかせられ、

「約束された聖霊を御父から受け、注いでくださいました」。これは聖霊降臨の説明になっています。聖霊は御子が父なる神から受けたもので、それをわたしたちに与えてくださったのです。父なる神の霊、御子イエスを通して与えられた霊、これが聖霊降臨節の聖霊です。



約束された聖霊、という時、それは何時約束されたのか、という問いが出てきます。

答えは、最初に読まれたルカ福音書10：17〜24にあります。と言うより、そこから読み取ってください、ということのようです。もっと相応しいところがありますが、今年はここです。

すべてのことは父から、子であるイエスに任せられている。天地の間の秘密を誰に明かすか、ということも委ねられている。それを幼子のようなものに示した。

子が誰で、父がどのようなものであるかを知らされるのは、子が選んだものだけです。

今、私たちは選ばれた者として、聖霊により、父と子を知ることが許されています。

ルカだけでは理解しにくいかもしれません。ヨハネ福音書14：26を御覧ください。

「しかし、弁護者、すなわち、父が私の名によってお遣わしになる聖霊が、あなた方にすべての事を教え、すべての事を思い起こさせてくださる。」

新共同訳で「弁護者」と訳された語は、口語訳では「助け主」と訳されていました。

パラクレートスの古い、根源的な意味を採用しています。法廷で呼び寄せられ傍らに立つ者、すなわち、力強い味方です。これは、先ほどからお話した御子イエスと聖霊の性格を良く表す言葉です。

　前回説教の最後に「慰めの聖霊」という事を申し上げたのはこのことです。

キリストの教会はこの力を継承しています。

私たちの教会は、父なる神と子なるキリストから遣わされた聖霊の力を受けています。

それは教え、理解させ、慰める力です。感謝しましょう。